痔疾患について
肛門疾患でお悩みの方は、当院へご相談ください。
肛門にできる病気を総称して「痔」とよびます。
特に多い3大痔疾患が、イボができる「痔核・脱肛」、切れる「裂肛」、感染して排膿する「肛門周囲膿瘍・痔瘻」です。
他にも肛門が狭い「肛門狭窄」、かゆみを伴う感染症の「コンジローマ」、直腸が脱出する「直腸脱」、かゆみを伴う湿疹の「肛門周囲湿疹」、皮膚に感染して排膿疼痛がある「膿皮症」などがあります。
手術が必要なのか、お薬だけで十分なのかは人それぞれです。大切な肛門になるべくメスを入れることがないよう、可能であれば保存的治療を勧めますが、いたずらに治療が長引かないように、手術が望ましい場合はきちんと手術での治療を提案します。
開院以来の年間肛門手術件数の推移です。当時肛門手術を手掛ける施設がすくなかったためか、開院以来10年ほどはうなぎのぼりでした。その後は手術件数も減少傾向となり、院長交代に伴い手術方針も変更しました。患者さんの意向も踏まえ、手術以外の選択肢をふまえた治療方針をたてることで、手術件数はさらに年々減少傾向にあります。
このような症状でお悩みの場合はご相談ください
出血
腫れている
痛み・かゆみがある
便ができにくい
でっぱりがある
便がもれる
※強い痛みがあるなど、出血が続くなど、脈が早いなどは早めに受診をしてください。
痔核・脱肛
肛門の中にはどなたもクッション状の痔核組織が存在し、本来便が漏れないよう肛門を閉じてくれています。
長年の正しくない排便習慣(過度のイキミ)・女性の出産・加齢現象などにより、これらの痔核組織が大きくなったり、つり上げているじん帯がのびることで出血・疼痛・脱出症状がみられるようになります。
一つに痔核脱肛といっても患者さんにより様々で、主に出血や疼痛症状のみであれば外用薬や排便コントロールでほとんどが対応できます。
ただし、じん帯のゆるみにより大きく脱出する場合は保存的治療で改善しにくいため、日常生活に影響がある場合(自分で手で戻す、常時脱出しているなど)は手術を勧めます。
手術について
手術には①痔核組織を切除して吸収糸で半閉鎖する「結紮切除術」
②ジオン®という硬化剤を注入する「ジオン注射による4段階注射法」
③そのそれぞれを組み合わせた「併用療法」があります。
皮膚成分である外痔核や脱出の程度がひどい場合は、10~20%に再発がみられるジオン注射療法を勧めません。
患者さんのおしりはその人それぞれなので、患者さんのおしりに応じた治療を行います。よくテレビなどで痔核組織がたくさんある(痔が何個もある)といって患者さんの不安につけ込むような場面をみることがありますが、本来の痔核組織は便失禁を防いでくれる「大切な痔核組織」なので、すべて手術で取り除く必要もなく、痔核組織を取りすぎることは術後排便機能障害の原因にもなりえます。
あくまで「患者さんの困る症状のもととなっているもののみを治す」ことが大切だと思います。
痔瘻・肛門周囲膿瘍
直腸と肛門の境界には「肛門腺」という分泌液をだすくぼみがあります。
個人差や性差もありますが、一般に男性や下痢体質に多いと言われています。
この肛門腺に感染が生じると、肛門括約筋を貫いて様々な痔瘻が発生します。
最も多くシンプルなものが括約筋を浅く貫く「単純痔瘻」で、手術もシンプルで術後疼痛も少ないです。
手術について
従来は括約筋ごと切開する「切開開放術」が再発率もきわめて低く主流でした。
ただし近年ではそれでも括約筋障害が出ると言われているため、括約筋の影響が少ない浅い痔瘻は「切開開放術」、深いものには輪ゴムでゆっくりと縛ってゆく「シートン法」や「括約筋温存術」を行います。
括約筋温存術は術式の複雑さから、一般的に約1割に再発があるとされますが、当院ではこの1割の再発をさらに低くするため工夫した温存存術を行っています。
まれにある複雑痔瘻は、瘻孔の走行が複雑で手術の難易度や再発率が高いですが、可能な限り括約筋温存につとめつつ再発率を低く抑える手術を行っています。
裂肛・肛門狭窄
肛門が切れることを「裂肛」と呼び、①太くて硬い便 ②狭い肛門 ③痔核の脱出に伴い裂ける随伴裂肛が原因とされます。
便に原因がある場合は各種の緩下剤や漢方薬と外用薬を用いることでほとんどが治癒します。
長期経過した慢性裂肛や、器質的なもの(肛門狭窄や随伴裂肛)の場合は手術となります。
手術について
手術では、裂肛部分を切除する「切除ドレナージ術」
肛門上皮が狭い場合は上皮を縦に開いて横縫合する「皮膚弁移動術(Skin Sliding Graft法 通称SSG)」
内括約筋肥厚がある場合はそれを切開する「側方内括約筋切開術(Lateral Internal Sphincterotomy 通称LIS)」
随伴裂肛の場合は痔核を切除する「結紮切除術」を行います。
やりすぎると術後の便失禁リスクとなるため、バランスを見ながら慎重に手術を行います。
直腸脱
直腸が肛門から反転して脱出するのを「直腸脱」と呼びます。
脱出による違和感や出血を伴い、便秘や便失禁を合併しやすく、しばしばQOLが低下するためまず手術を勧めます。
加齢により骨盤底筋や肛門括約筋が緩むことで生じますが、稀に新生児や若年者(直腸間膜の固定不良が原因)でも発生します。
手術について
手術法は100種類を超えるとされ、「これが一番」と言える術式が存在しません。
本邦では昔から脱出する直腸粘膜を瘤状に縛りさらに肛門周囲にひもをいれて縛る「Gant-MIWA+Thiersch法」が伝統的に行われてきましたが、海外では評価されず行われていません。
術後に便秘の原因になったり、ひもに感染を生じたりすることがあります。
粘膜脱主体のごく軽度のものには、粘膜脱に硬化剤を注入する「ジオン®注射」を行うことがありますが、あくまでジオン注射の適応は直腸脱にないので粘膜脱に限ります。
他院で侵襲が低いからと言われて安易にこの注射を行っている施設もあるようですが、保険適応外・すぐに再発する・まれに重度の合併症(死亡例もあります)があるなど、問題点を抱えているため慎重に行うべきと考えます。
脱出の大きくない(5cm未満)・緊満感のない・他の臓器脱(子宮脱、膀胱脱、膣脱など)合併がない直腸脱には、脱出してくる直腸の粘膜を切除し、筋層をアコーディオンのように縦方向に縫縮し直す「Rhen-Delorme法」を行います。
合併症も術後の排便障害悪化も少なくよい手術と考えております。
近年、保険適応となった「腹腔鏡下直腸固定術」も再発率がきわめて低く優れた手術ですが、すべての直腸脱に必要な手術ではなく、比較的大きなもの(5cm以上)や他の臓器脱(子宮・膀胱・膣・小腸など)を合併した場合に適応としています。その場合は排便造影検査を行い、骨盤底の脆弱な部位を評価し、それぞれに応じた修復方法(site specific repair)を行っています。この場合は当院では行えないので連携した施設で行います。
異物であるメッシュを極力使わない、もしくは減らした手術となるように心がけています。
お気軽にお問い合わせください。0897-41-8101受付時間 8:30-17:00 [ 木曜午後・土曜午後・日・祝日除く ]
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